◇ストーカーの定義
ストーカーとはある特定の人物に対して、つきまとい、監視、攻撃、脅迫等の行為を繰り返し行う人物を指します。ストーカーの中には直接的な危害を加える者のみでなく、まったく危害を加えず、異常なまでにつきまとうだけの人物もいます。また、自らを被害者であると考え、動機を正当化する者もいます。
中には危害を加えるストーカーもおり、目的が何であれストーカーは恐怖感、心理的なダメージを与えるため、被害者はどこにいても不安を感じるようになってしまいます。
男性、女性、そして子供でもストーカーの標的になります。
◇典型的なストーカー行為
・連続して無言電話をかける。繰り返しファックスを送る。
・被害者の家、勤務先、学校、その他通常被害者が所在する場所の付近、目に付く場所を徘徊する。
・徒歩または車などで相手につきまとう。
・店や映画館等で待ち伏せし、突然、相手の近くに現れる。
・相手の目につく場所に現れるが、相手に見られることには無頓着でいる場合もある。
・贈り物やメッセージを送る。
・乱暴、もしくは卑猥な言葉を用いて話しかける。
・面会や交際を無理やり求め続ける。
・性的羞恥心を害する文書、画像等を送りつける。
◇ストーカー行為と法律
日本では2000年5月18日、「ストーカー行為等の規制等に関する法律(ストーカー規制法)」が成立し、11月24日から施行されました。この法律はストーカー行為等への処罰など必要な規制と、被害者に対する援助等を定めています。
この法律による規制の対象となるのは、「つきまとい等」と「ストーカー行為」の二つです。
「つきまとい等」とは
この法律では、特定の者に対する恋愛感情その他の好意感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、その特定の者又はその家族などに対して行う以下の8つの行為を「つきまとい等」と規定し、規制しています。
・つきまとい・待ち伏せ・押しかけ
つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所の付近において見張りをし、又は住居等に押し掛けること。
・監視していると告げる行為
その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。例えば、「今日はAさんと一緒に銀座で食事をしていましたね」と、口頭・電話や電子メール等で連絡することや、自転車の前カゴにメモを置いておくなどすることをいいます。
・面会・交際の要求
面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること。例えば、拒否しているにもかかわらず、面会や交際、復縁又は贈り物を受け取るよう要求することがこれにあたります。
・乱暴な言動
著しく粗野又は乱暴な言動をすること。例えば、大声で「バカヤロー」と粗野な言葉を浴びせることや、家の前でクラクションを鳴らすことなどはこれにあたります。
・無言電話や連続した電話、ファクシミリ
電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ若しくはファクシミリ装置を用いて送信すること。例えば、無言電話をかけることや、拒否しているにもかかわらず、短時間に何度も電話をかけたりFAXを送り付けることがこれにあたります。
・汚物などの送付
汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し又はその知り得る状態に置くこと。例えば、汚物や動物の死体など、不愉快や嫌悪感を与えるものを自宅や職場に送り付けることがこれにあたります。
・名誉を傷つける
その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。例えば、中傷したり名誉を傷つけるような内容を告げたり文書などを届けることがこれにあたります。
・性的羞恥心の侵害
その性的羞恥心を害する事項を告げもしくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する文書、図画その他の物を送付しもしくはその知り得る状態に置くこと。例えば、わいせつな写真などを自宅に送り付けたり、電話や手紙で卑劣な言葉を告げて辱めようとすることなどがこれにあたります。
◇「ストーカー行為」とは
同一の者に対し「つきまとい等」を繰り返して行うことを「ストーカー行為」と規定して、罰則を設けています。但し「つきまとい等」の上記の行為にあっては、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害され不安を覚えさせるような方法で行われた場合に限られます。
◇警告
警察が捜査を行うためには、ストーカーの被害者が最寄の警察署に被害の届出をする必要があります。警察が状況確認を行い、その申し出が認められたときは、当該行為をした者に対し、国家公安委員会規則で定めるところにより、更に反復して当該行為をしてはならない旨を警告することができます。
◇禁止命令
さらに、警告を受けた者がそれに従わず、再びつきまとい等の行為をした場合、そしてそれが反復して行われる恐れがあると認められた場合は、警察はその行為をしてはならないことを命令することができます。
◇罰則
ストーカー行為をした者に対して、6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられます。ただし、この場合は告訴が行われたばあいです。禁止命令に違反してストーカー行為をした者に対しては、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられます。繰り返し行わなくても、禁止命令等に違反しただけで、50万円以下の罰金が科せられます。
◇避けるべき行動と取るべき行動
不用意にストーカーを刺激しないように気をつけてください。
・自分からストーカーと連絡を取らないようにしてください。ストーカーは自分に興味を持っていると誤解する可能性があります。
・ストーカーと会話をせざるを得ない場合は、毅然とした態度で、直接的に発言するようにしてください。はっきりした口調で話し、感情的にならないようにしてください。「すみませんが、今はお付き合いすることに興味がありません。」「今は忙しすぎます。」などの発言は、近い将来なら付き合うことに興味があると誤解される場合があります。また、「今、付き合っている人がいます」等の発言は、「付き合っている人さえいなければ付き合います」という意味に誤解されます。発言前には、その内容をよく考えるよう心がけ、ストーカーには興味を持っていないことを明確かつ単純に伝えるようにしてください。
・ストーカーからの電話や手紙には、可能な限り対応しないでください。ストーカーとの会話を極力避けてください。ストーカーからの電話を9回無視したとしても、10回目で電話に出てしまうと、粘り強くかければ成功するという印象を与えます。ストーカーは1度でもあなたの注意を引くことに成功すると、その後繰り返し注意を引こうとします。
・ストーカーに伝えることがある場合は、弁護士を通してください。
・つきまとわれたり、電話、郵便物やEメールを受け取り、ストーカー行為をされていると感じた場合は、いつ、どこで、何をされたかの詳細を書き留めておいてください。
・友人・隣人・親戚・同僚に協力を頼み、ストーカーの行動を監視してもらうようにしてください。可能であれば、あなた以外の人物がストーカーの存在に気づいていることをストーカーに認識させてください。
・外出時は行き先を身近な人に伝え、おおよその出発時間、到着予定時間を伝えるようにしてください。
・電話によるストーカー行為を受けた場合は、電話帳から電話番号を削除するよう検討してください。また、迷惑電話撃退サービスや発信電話番号表示サービスの利用をお勧めします。留守番電話に残っている番号を証拠として残しておくようにしてください。
・電話に出る際は「もしもし」または「はい」とだけ言い、自分の名前やその他の情報は言わないようにしてください。
・冷静さを保ち、感情を表さないようにしてください。ストーカーは相手が反応を示さなければ諦める場合があります。
・Eメールによるストーカー行為を受けた場合は、メールのコピーをディスクや印刷した形で保存しておいてください。原文も削除しないようにしてください。
・出勤、買い物などの移動ルートおよび日常生活パターンを時々変えるようにしてください。
・出入り口など、住居の安全対策がきちんとしているか確認してください。
・ストーカーがゴミなどから個人情報を入手しないよう気をつけてください。必要な場合にはシュレッダーの購入等を検討してください。
・外出の際は携帯電話を所持し、携帯電話には警察、友人など緊急時の連絡先を短縮登録しておいてください。
・ストーカーに関わる全ての事柄を文書で残しておくようにしてください。告訴しない場合でも、送付物、贈り物は証拠として保管しておいてください。それらをできるだけ手をつけない状態で袋にいれ、日付を記載してください。
・どのような状況でも、ストーカーと面会する約束をしないでください。
・常に周りの状況に警戒し、人が集まる店、ガソリンスタンド、警察署などの安全を確保できる場所がどこにあるかを確認しておいてください。
・ストーカーによる脅威を感じた場合は、周囲の人に協力を求めてください。
◇運転時の注意
・運転中に後をつけられていると感じたら、交差点ごとに連続して4回左折または右折するようにしてください。それでも車が後をついてくる場合は、つけられている可能性が非常に高いです。このような場合には、すべてのドアに鍵がかかっていること、窓がすべて閉まっていることを確認し、また、車外には出ないようにしてください。
・後をつけられている場合は、直接自宅に向かわないようにしてください。ストーカーに自宅を知られることになります。携帯電話を持っている場合は速やかに警察に連絡をし、現在の所在地、および行先を伝えてください。
・携帯電話を持っていない場合は最寄の警察署、消防署、ガソリンスタンドに向かってください。また、車のクラクションを鳴らし、周囲の注意を引くようにしてください。
・可能であれば、後をつけてくる車のナンバー、車種を記憶するか、書き留めるようにしてください。
・日常的に運転ルートを変えてください。
・車に手を加えられたかもしれないと感じた場合は、車の点検を行ってください。点検箇所として、ホイールキャップがなくなっていないか、タイヤのナットが緩められていないか、タイヤに穴が開けられていないかなどが挙げられます。運転前にはボンネットを開け、異常もしくは怪しいと思われる部分を探し、また水漏れ、オイル漏れがないかを確認してください。ブレーキの点検、およびブレーキオイルが漏れていないか車の下も確認してください。もし車の異常を発見した場合は、安全な場所へ移動し、警察へ連絡してください。その際、車を運転したり、証拠部分に触れることのないようにしてください。