身分詐称詐欺とは
身分詐称詐欺とは、健康保険証やパスポート、運転免許証の番号など身分を証明する際に必要とされる個人情報を獲得し、他人を装い、詐欺などの犯罪を実行することをいいます。
身分詐称の詐欺で最も一般的とされるのは、金銭的な利益の獲得を目的としており、実在する名前を使用する詐欺と既存する口座を横領する詐欺の2種類があります。実在する名前を使用する詐欺の場合は、クレジットカードや携帯電話の新規契約、小切手帳を入手するための当座預貯金口座の開設など、新規で取引などを開始するために個人情報を利用する詐欺です。既存する口座を横領する詐欺の場合は、他人の口座を利用するためにその名義人を装います。典型的な例としては、カードの明細書などの送付先住所を変更しておき、被害者が問題の発生を認識するまでの間その口座からの支払いを利用し続けるという形態です。インターネットにより個人的なやりとりを不用とする取引が可能となったことから、詐欺師にとっては獲得した個人情報などを利用しやすい状況となっています。
個人情報は、本人のみが扱うとは限りません。詐欺師が他人の身分を装う理由は幾多にも及びます。
・銀行口座の開設やクレジットカードの新規契約、融資および住宅ローンの借入れ、商品および各種サービスの購入などにより、金銭的な利益を獲得するため。
・不正な給付金の申請や税金の支払いを回避するため。
・問題のある信用履歴の隠匿や借金の返済を回避するため。
・過去の犯罪履歴を隠匿したり、警察からの監視を逃れ、多様な犯罪活動を継続するため。
・生活費などの支払いを回避するため。
・免許停止や取消の処分を受けても車の運転を継続するため。
・再婚や重婚するため。
・不正な信用証明書を窃盗犯に提供するため。
単独で活動する小規模な詐欺師とは異なり、犯罪のネットワークを持つ組織犯罪グループは、複数の身分を利用することで大規模な身分詐称の詐欺を実行します。身分詐称の詐欺は、人身売買や不法移民、麻薬密売、テロ活動、マネーロンダリングなどの重大な犯罪とも関連しています。そのため、自分の名前がそれらの犯罪に関係してしまう可能性があります。
身分詐称の詐欺事件は世界的に増加しており、結果として無防備な市民が経済的な打撃を被っています。またその被害額は、1日に約24億円の犯罪資金を産出していると推定されています。