個人情報の盗難
◇ID(個人情報)盗難とは?
ID盗難とは権利のない人が健康保険証、パスポート、運転免許の詳細などの個人情報を意図的に得て、本人の了解なしにその情報を使い、詐欺やその他の犯罪を犯すことをいいます。
盗難された個人情報は、無断でローンを申し込む、銀行口座の開設、車の購入、クレジットカードや保険の申し込み、公共料金の支払い、アパートを貸りるなど、様々なところで悪用されます。また、クレジットヒストリー(調査機関により個人の経済活動の歴史が記録されたものでその人の経済的信用度を示す)が乱され、財政上の社会的信用の回復が困難な状況に陥ることがしばしば起こります。さらに、より深刻な犯罪などに被害者の名前が使われることもあります。
残念なことに世界中でID犯罪は増加しており、被害者に大きな損害を残しています。日本ネットワークセキュリティ協会の2007年度の調査によると、被害者への賠償などを含めた被害総額は2兆2714億円に上ることが明らかになりました。
◇個人情報はどのようにして入手されるのでしょう。
ID盗難で心配されるのは、非常に簡単に個人情報が悪用できるということです。個人を識別するのに十分な情報さえあれば、多岐にわたる犯罪を引き起こせます。例えば、賃貸やクレジットカードの申し込み、銀行口座からの詐欺的な預金引き出し、テレフォンカードの詐欺的な使用等、もし犯人が実名を使ったら拒絶されるような物品や特権を手に入れるなどの犯行に繋がります。泥棒がいったん個人情報を入手してしまうと、個人のクレジットヒストリー(現在と過去の経済的活動に基づく信用度)を素早く確実に破壊します。以下に挙げている手口がIDを盗まれる例として知られています。
・郵便配達人の跡をつけ、郵便物を盗むことによって、クレジットカードや銀行の明細書、支払い前に現物を得るタイプの購入同意書、テレフォンカードや税金の情報などを入手する手口。
・家や会社のゴミ箱から、銀行やクレジットカードの詳細、その他の役に立つ個人情報を見つけ出す手口。
・財布やハンドバッグを盗んで、クレジットカードやバンクカード、身分証明書、運転免許などを得る手口。
・家主、雇い主、その他クレジットレポート(クレジットヒストリーの情報がまとめられたもの)を見る正当な権利や必要がある人などのふりをして、それを詐欺的に手に入れる手口。
・家に押し入ったり、会社において個人の記録への不正アクセスなどにより、個人情報を得る手口。
・インターネットを駆使して不法に個人情報を得る手口。
・内部の密告者から個人情報を買う手口。例えば、泥棒は商店等の従業員を買収して、物品やサービス、クレジット状態など、申込書に記載された情報を得るかもしれません。
・住所変更届出書を提出することでほかの場所に明細書を送らせ、被害者が詐欺的取引を早期に発見する機会を遅らせる手口。
◇個人情報はどのように悪用されるのでしょう。
・被害者の名前、誕生日、ID番号で新しいクレジットカードを作成し、買い物に使ったり、到底払えないような多額の借金をしたりします。さらにこの常軌を逸した勘定は、被害者の信用を評価するクレジットレコードに記録されてしまいます。
・クレジットカード会社に電話し、犯罪の犠牲になったふりをしてクレジットカードの明細書送付先を変更し、お金を使い込むことがあります。明細書は新しい住所に送付されるので、被害者が問題に気づくのが遅れてしまいます。
・被害者の名前で携帯電話が契約されることがあります。
・銀行口座を被害者の名前で開設し、偽造小切手が作られることがあります。
・偽造小切手やデビットカードを作り、被害者の銀行口座からお金を引き出すことがあります。
◇危険を最小限にするために
ID盗難から身を守るための100パーセント確実な方法を探し出すことは困難ですが、個人情報を与えないよう努めることで、危険を最小限に留めることができます。
次の防犯対策はID盗難に遭う危険を最小限に留めることに有効です。
・財布やハンドバッグには常に注意を払い、個人情報が中に入っていることを忘れないでください。
・個人情報を記す際には常に細心の注意を払ってください。個人の詳細を記せば記すだけ、不必要に個人情報を他人に与えることになります。個人情報を渡す前に、それが何に使用され、どんな理由でどのような人に見られるのかしっかり確認してください。
・請求書送付の時期には注意を払い、もし通常の時期に請求書が届かない場合は、契約会社に問い合わせてください。行方不明の請求書がある場合はID盗難の可能性があり、泥棒があなたのクレジットカード口座を横取りし、請求書送付先住所を変更したかもしれません。
・郵便物は頻繁に確認し、盗難を防いでください。郵便ポスト内は常に片付け、外出の際はあなたが戻るまでの間、近所の友人や家族に手紙を収集し、保管してもらうことを頼みましょう。また、重要な郵便物は郵便局の収集箱か地方郵便局で保管してもらうようにしてください。
・クレジットカード、電話や銀行口座のパスワードには、旧姓や誕生日などの簡単に分かってしまうような情報は使用しないでください。
・クレジットカードやデビットカードには受け取ったらすぐに、消えにくいペンでしっかりサインし、安全に保管しましょう。
・PINナンバーをカードには決して書かず、また現在使用中のカードだけを持ち歩くようにしましょう。
・カードで買い物をした後は忘れずにカードと領収書をもらい、渡されたカードと領収書が正しいかどうか、もう一度確認してください。
・新規のカードまたは更新したカードが予定の日に届かない場合は、すぐにカード会社へ連絡を取りましょう。
・実際にカードで買い物した明細と請求が一致することを確認するためにも、クレジットカードの明細書は大切に保管してください。また、もしも明細書に不正な金額が提示されていたり、金額がレシートと一致しなかった場合は、すぐにカード会社へ連絡してください。
・クレジットカードの領収書や古い明細書を破棄する際は、むやみにゴミ箱に捨てたりせず、また特にナンバーなど悪用されるような部分を処理せずに捨てることは決してしないでください。なるべく捨てる前に、すべての記録をシュレッダーにかけるか、細かく刻んで捨ててください。
・使っていない支払いカードやクレジットカードはキャンセルしましょう。
・小切手にクレジットカードやデビットカードのナンバーは書かないようにし、また他の手段での支払いに、身分証明としてカードを用いることは避けましょう。
・たとえあなたから電話をかけたとしても、合法的な電話であることが確認できない限りは、カードでの支払いのやり取りや銀行等の秘密情報を簡単に提供することは避けてください。
・身分証明書や運転免許等をなくした場合は、すぐにそれぞれのカードを発行している機関に連絡してください。
・カードの紛失や盗難に素早く対処できるよう、安全な場所にクレジットカードや銀行口座のリストを保管してください。リストには口座番号、有効期限、契約会社の顧客サービス課と詐欺課の電話番号も記しておきましょう。必要に迫られたとき以外は、身分証明書・戸籍謄本・パスポートなどはむやみに持ち歩かないようにしてください。
・毎月届く明細書の内容が納得できない時はすぐに最寄の適切な協会や銀行に連絡しましょう。
・クレジットレポートのコピーを定期的に入手してください。レポートには銀行口座などの金融に関することが名前の下にリストされており、だれかが不正に自分名義の口座を開設したり、使用したりしていないかチェックする有効な手段になります。