ナイジェリア419事件
◇概要
ナイジェリア詐欺事件(国際的にはナイジェリア刑法419条に抵触する犯罪(詐欺)を指すことから通称「419事件」と呼ばれています)は通常小・中規模のビジネスやチャリティ団体を標的とします。この国際的詐欺事件は主にアメリカ、オーストラリアを含む、世界各国のEメールやファックスが受信可能な場所で起こっています。詐欺はナイジェリア中央銀行、もしくはナイジェリア政府の関係者と名乗る人物から、海外送金の際の口座名義貸し依頼及び多額の商取引等に関する手紙が送られくることから始まります。しかし、これらの詐欺は元々トーゴ、リベリア、シエラレオネ、コートジボワールなどの地域で始まったといわれています。
現時点で様々な詐欺の手口が横行しています。これらは通常多額の資金を一時的に海外の銀行口座に送金する必要があるとし、口座の名義貸しを依頼、引き受けてくれた人には総額の数パーセントが支払われるといった内容のEメール、または手紙が送られてくるといった手口で、賄賂や銀行手数料と称して前金を巻き上げられ、多くの被害者がでています。この詐欺の損害は莫大な額に上り、現在も被害は増え続けています。
2001年米同時多発テロの余波を受け、ナイジェリア政府はこの詐欺行為を厳重に取り締まるよう大きな圧力を受けました。マネーロンダリングを取り締まるための政府間機関として設立されたアメリカ政府役員とパリを基盤とした金融活動作業部会(FATF)は、この犯罪の進行は結果的にテロリストへの資金提供につながることを警告しました。ナイジェリア政府はこの組織からの経済制裁を恐れ、マネーロンダリングに対する法律を再検討し、犯罪者の取り締まり、撲滅を目的とした経済・金融犯罪対策委員会(EFCC)を立ち上げました。ナイジェリア政府はまた、2004年3月初頭にオルセガン・オバサンジョ大統領がインターネット犯罪を取り締まるための機関を設立したことを発表しました。大統領はこの機関に詐欺を素早く認識するプログラム助成に乗り出すように強く促し、国際社会に向けナイジェリアは犯罪から脱しようとしていることをアピールしました。
419詐欺事件から最近回収された財産および金銭の総額は3億米ドル以上に達しています。ナイジェリア中央銀行は詐欺集団を捕まえ、それを見せしめとすることを宣言しました。現在5人のナイジェリア人がサンパウロのバンコ・ノロエステ銀行から2億4,200万米ドルを騙し取った事件の裁判が行われています。EFCCの代表はこういった事件に関して、世界で最も巧妙な手口の詐欺事件だとしています。バンコ・ノロエステの国際財政部代表は、何度もナイジェリアの口座へ現金を振り込み、騙し取られました。彼はアブジャに新しい空港を作るという架空のプロジェクトへの参加という罠にはまっています。
偽の銀行書類を使用し、役員に成りすました詐欺の手口が見られるようになった後、国の中央銀行はさらなる対策を取り始めました。ナイジェリア中央銀行は商業銀行に対し、この419事件に関与する送金を許可した場合は、責任を持って被害者に対し返金をするように宣告しました。
◇手口
手紙の中で、ナイジェリア政府の高官が、安心して1000万から6000万米ドルを口座に預けられる信頼の置ける外国資本の会社を探していると言います。勿論、多岐に渡る違ったケースがありますが、大抵は高額な取引で、手紙には大抵、資金はナイジェリア政府がいくつかの事業に対して支払った予算の余分額であるなどという言及があります。
この詐欺の目的は被害者にかなり利益のある取引に参加することができると思い込ませることです。興味を示した被害者には、更に偽造のナイジェリア政府からの印刷付の便箋や公印、それに偽の融資、支払い計画や銀行為替手形等を送ることで安心させます。詐欺師は更に政府の役員と実際のまたは偽の政府のオフィスでのミーティングを行うと約束することで、自分の影響力や信頼性のある「つて」があることを強調します。
被害者が一度この計画を信じたが最後、全ては悪い方向へ進んでいきます。そこから今度は計画を安定させるためにもっと高額な資金を提供するよう強要されます。例えば、多額の賄賂を前払いで要求してきたり、予期しない税金や手数料を、送金前に政府に支払われなければならないとして被害者に送金させるなどです。毎回これが最後の支払いだと強調しつつ、実際はこの計画は何ヶ月にも渡り、本人が詐欺だと認識するまで続きます。
このような詐欺行為は何年もの間、横行しており、今では大多数の被害者が泣き寝入りしていることから、手口を更に発展させることとなっています。最近のナイジェリア詐欺の手口として、口座送金に代わって、ビジネスを標的として、商品の買取を持ちかけるものがあります。
この事件の場合は、詐欺師が車などといった高価なものをオンラインで購入したいことを見せかけ、買手はこの仕事はアメリカと協力しており、商品の額と運送料を含めた額の小切手を送るといいます。売り手が小切手を受け取った後、買手は小切手に含まれている運送料だけ電信振込みしてくれたら、それで出荷を手配できるといいます。この手口の巧妙さはお金を電信振込みした後に、被害者は小切手が偽物だと気づき、そのときにはすでに発送料は騙し取られてしまっているというところです。
いまのところ、銀行システムの落とし穴を利用できるアメリカでしかこの詐欺は見られてません。問題は銀行が小切手を換金する為の処理を開始しているとしても、その小切手が不正なものではないと証明された訳ではないということです。銀行がそれを不正小切手であると気づくのにおよそ1週間を要し、その間に運送料は電信振込みされてしまいます。もし、これが正当な申し込みであり、小切手を送ると言ってから、そのうちの幾らかを返送して欲しいと言ってきた場合は、詐欺である可能性が高いです。
◇対策
甘い誘いには乗らないようにしましょう。協力に対し正当な報酬を払うと約束するにも関わらず、詐欺の目的は商談ではなく、お金を奪うことなのです。
金融関係の情報漏洩に注意して下さい。例え送金に合意しなかったとしても、詐欺に必要なのは口座番号と引き出すための番号なのです。
交渉の為に現地に行くのは避けてください。被害者の中には海外に誘われたり、または詐欺を究明する為に現地まで赴き、拘束され、身代金を要求されたり、殺害されたケースなどもあります。
◇過去の例
最も信頼の置けるウェブサイトがこの手の内容の文書がきた場合には一番注意が必要だと警告しています。
典型的なケースとしては、「自分は石油を扱う政府の幹部(あるいは軍の幹部)であり、政府(あるいは軍)の関係した大規模契約を斡旋した手数料として大金(数百万ドルから数千ドル)を入手したが、公務員(あるいは軍)という立場上、外国に口座を設けてそこに送金してもらうことは出来ない。ついては、口座名義を貸してくれれば謝礼として手数料の一部(20%から40%)を贈呈するので、銀行口座に関する情報を送付してほしい」などの内容の文面を送ってくるものです。
その他のケースでは、ナイジェリアなどより「現地に居住している日本人(又は外国人)が莫大な遺産を残して死亡した。同人の遺言により遺産は貴団体(または、大学、研究所等)に送られることになった」という旨の話が宗教団体や慈善団体等に持ち掛けられる。相手が乗ってくると、遺産の現金化及び海外送金のために、政府機関に対し手数料や税金を支払う必要があるとして、数万ドルの送金を要請してくる。同手数料を払い込むと、以後連絡が途絶える、などです。
このような詐欺は全てが似たりよったりな訳ではありませんが、共通している事は、要求している内容や、お金を得る為の手口です。