振り込め詐欺
振り込め詐欺による被害は止まるところを知らず、被害は数万件に及んでいます。警察庁によると、2005年の恐喝などを含む振り込め詐欺の認知件数は2万1,000件以上で、その被害総額は250億円以上にも上るとの事です。振り込め詐欺に関するニュースが繰り返し報道されているものの、手口の広範化、巧妙化によって、事件の被害者は後を絶ちません。
◇詐欺の内容とその手口
様々な種類の振り込め詐欺が行われていますが、典型的な手口は、泣きながら電話をかけてくるというものです。狼狽した様子の血縁者を名乗る者が電話口で泣きながら、「俺、俺」と電話を受けた身内に話し、「借金取りに追われており大変な事になっている。借金の返済をしないとひどい目に遭うかもしれない。」と説明します。泣きながら話をする事により、声色が変わり、話に信憑性を持たせます。詐欺師は、動揺する相手に対し、自分または身内が本当に窮地に陥っていると信じさせ、口座に現金を振り込ませる術に長けています。口座番号を教えられ、慌てた家族は、事実確認をしないまま指定された口座に振り込みをしてしまいます。その後、本物の身内と連絡を取った時に初めて、詐欺に遭った事が判明します。しかし、その頃には振り込んだお金の行方はわかりません。
その他の手口として、警察官や弁護士、司法書士、債務者、保険会社の社員などを装い、被害者の身内が出先、滞在先で事故を起こしたり、借金をしたり、拘留を受けた等のトラブルに遭ったと自宅に電話を掛け、示談金や借金の返済、保釈金や賠償金と称して多額の現金を指定口座に振り込ませるというものです。このような手口は、集団で行われ、警察官や弁護士、事故の被害者、病院の医師といった役割分担をし、別々に何度も電話を掛ける等、非常に手の込んだ方法で詐欺を行います。これらの詐欺師集団は、標的の個人情報を入手していることが多く、電話を掛ける相手(電話を受ける本人)、事故やトラブルに遭っていると思わせる身内(一人暮らしの家族、留学中、海外赴任中の家族等)のそれぞれの電話番号をあらかじめ入手し、携帯電話会社等に本人を装って連絡し、サービス停止の手続きをするなど、被害者に家族同士で確認されることを防ぐことで、電話を受ける本人を動揺させるなど、その巧妙さは恐ろしいものです。
振り込め詐欺については、基本的には突然の電話に始まるという認識が持たれていましたが、上記の例のように、標的に子供がいたり、子供が留学中であることを把握しているなど、犯罪者による事前調査が行われているのは明らかです。
◇その他、よくある手口
・詐欺師が、トラブルに陥っている孫を手助けしている警察官、もしくは弁護士であると名乗り、手助けを継続するにあたって更なる資金が必要であると語る
・弁護士を装う男が留学中の子供がいる家族を標的とし、子供がトラブルに巻き込まれ、示談金が必要であるという電話をかけてくる
・息子を装い、ヤクザと問題を起こし、お金を支払わないと暴行を受ける恐れがあると告げる
・孫を装い、祖父母に借金の肩代わりを懇願する
・弁護士を装い、家族の一人が逮捕された為、保釈金を支払うよう要求する
・子供がいる家族を標的として誘拐を装う
◇2004年10月新潟中越地震を経て
地震発生後、その状況を利用した悪質な詐欺事件が問題となりました。警察庁は、この種の詐欺に警戒するように全国の都道府県警に一斉に指示を出しました。初期の報告からは、この種の詐欺は60~70歳代の年齢層を狙ったものと推測されています。
見附市に住む男性は、自衛隊員を名乗る男性から電話を受け取っています。この自衛隊員を名乗る男は、被害者の息子が地滑りに遭い、ヘリコプターで救出するために多額の費用が必要になるとして、被害者の男性に100万円の支払いを要求しました。また同日に、同市内に住む60歳代の女性が、前述と同様の電話を受け取っています。この女性は彼女の息子と連絡が取れたため、その電話の内容が嘘であると確信し被害を免れました。
青森県に住む70歳の男性は、日本赤十字を名乗る女性から、新潟県で起きた地震の義援金を募っていると話を持ちかけられました。日本赤十字によると、職員が個人的に個人宅を訪問することはなく、寄付金は必ず指定された郵便貯金口座に振り込む方法で募っていると話しています。
◇銀行の対応
各銀行はこれまでに多くの口座を閉鎖、凍結してきました。これらは、振り込め詐欺による口座だけでなく、不正金融業者や、他の犯罪行為に利用されていたものも含まれているとみられています。
振り込め詐欺被害の送金は殆どがATMを通して行われていることを受けて、多くの銀行で、送金をする際、画面にその送金について再確認するメッセージの表示が実行されています。
◇振り込め詐欺の被害者になることを避ける
・そのような電話があった場合、詐欺の電話かも知れないと疑いの心を持ち、電話先の相手に感情的にならず落ち着いて対応して下さい。
・身内の中でしか知らない事などを尋ね、電話口の相手が本人であるか確認して下さい。
・着信番号を調べて下さい。通常この詐欺の電話は非通知設定でかかってきますが、お持ちの電話機が電話番号表示機能付のものであれば、表示された番号を参考にしてください。通常、警察からの電話は、下4桁が0110と表示されます。公衆電話からの電話は、「公衆」と表示されます。その他家族同士で連絡を取り合う場合は、あらかじめ非通知設定にはしないと決めておくことなどをお勧めします。
・電話での会話の詳細を記録して下さい。
・送金の手はずが整い次第、連絡し直すと伝えて下さい。そして、家族内で、連絡を試み、詐欺師が言っている事実が本当に起こっているのか確認してください。
・相手への連絡を拒まれた場合、再び相手から連絡を入れる日時を決めて下さい。(もし、それが詐欺であれば、警察の犯人調査に役立ちます。)
・電話の内容を確認する為、他の身内にも連絡を取って下さい。
・詐欺であると確信が持てる場合は、警察に通報して下さい。
◇はがき、メール等による身に覚えのない請求に対して
・利用した覚えがなければ現金を振り込まない。
・請求の電話があってもはっきり断る。
・相手に連絡しない。
・相手に自分の氏名、住所を教えない。
・見覚えのない送信元からのメールに表示されているアドレスにはアクセスしない。
・念のため、請求書類は保管しておく。
・発送元が裁判所の場合は、放置せずに裁判所に確認する。