株式市場における詐欺
最近の新たな詐欺の手口として、株式市場の投資家をねらった犯罪が注目されています。
まず始めに、犯人は何人かの個人情報をまとめて盗み出し、偽の文書を作成します。そして、それを使って株式市場に複数の取引口座を開設、1~2つの企業の株を購入します。この段階であまり取引されていない銘柄を大量に購入することにより、株価は大幅に引き上げられることになります。そこで企業が上向きであるかのように見せかけておきながらすぐにすべての株を売却、株価は下落し投資家は莫大な損失を負うことになります。最初の段階で株価の引き上げに失敗した場合でも、書類しか証拠がないため「名義人」とされた被害者に損害がすべていくことになります。
これまでの被害報告では、ほとんどの場合証券会社が標的となっています。しかし今後、取引口座の開設が容易とされる個人の投資家に被害が拡大することが予想されています。
偽装の取引口座を使って株を購入するだけでなく、インターネットを通じて偽の株式情報を流すという方法がとられることもあります。これは、幅広い人に対して安く情報を流すことができるというインターネットの特性を利用したものと言えます。具体的には、企業ウェブサイトの掲示板に複数の名前を使用して企業を絶賛するコメントを投稿、内部の極秘情報といいながら未発表の新商品や契約の偽情報を流す、信頼性の高い情報源からと偽って企業を評価する記事の引用を掲載、有料のオンライン・ニュースレターを使って新規注目株の企業を宣伝するなどの例が挙げられます。
さらに、実在する証券会社の傘下組織や架空の証券会社を偽った詐欺事件も発生しています。この手口では、個人の投資家に特定の株を買い時であると宣伝し、大量の投資金を騙しとるというものです。本物の証券会社職員に見えるよう、犯人はスーツなどの正装で現れ、打ち合わせ場所にも高級レストランや5つ星レストランが使用されます。交渉中も携帯電話(1人が2つ以上所持している場合もある)に顧客からの見せかけの問い合わせが次々かかってくるなど、さまざまな偽装工作が行われています。また、騙した投資家に配当金(実際は次の標的から騙し取ったもの)を支払うなどして詐欺行為を継続、利益の拡大をねらう犯人もいます。
◇株式市場の詐欺を防止するには
・株を購入する場合は、企業の宣伝広告などに頼らず自分でしっかりと調査するようにしてください。主なチェック項目は以下の通りです。
– 企業の製品、サービスの内容
– 主な取引先
– 実際、どのくらいの物的資産があるか
– 企業財務は監査済みか
– 経営者のプロフィール
– 投資銀行により認可証が発行されているか
・「内部情報」などと謳っているものには注意してください。
・「独自調査による情報」とされているものは、偽情報である確率が高いと言えます。
・インターネット上の掲示板に掲載されてあるコメントは信用しない方がよいでしょう。
・低価格であったにも関わらず、突然に急騰した株には気を付けてください。
・洗練された企業ウェブサイトや高級な服装をした人物など、企業や個人の信頼性を見た目で判断しないようにしてください。
・株を売買する際は、なぜその株を買うのか理由を明確にするようにしてください。株には必ずリスクが伴うことを考慮し、取引は慎重に行ってください。