ドアの安全
住宅に侵入する際、ドアからの侵入は、最も簡単な侵入方法のひとつです。また、適切な防犯対策が講じられていないドアは、家具や貴重品を運び出すのに最も便利な通り道でもあります。このような犯罪被害の多くは、人を狙ったものではなく、私財などの物的被害であると言われています。侵入者(犯罪者は常に狙いやすい標的を選びます。)から家財を保護するため、防犯対策を取ることが大切です。
家のドアに関して専門家にアドバイスを求めた場合、その専門家が専門とする分野によって、アドバイスが異なることがあります。例えば、消防隊員は、火災の際に居住者が逃げ遅れないように、ドアに安全錠を付けないようにと勧める一方、他のセキュリティ専門家は、家宅侵入防止には、安全錠を付けることが最良であるとアドバイスする場合があります。
各個人が重要視するポイントや家の所在地にもよりますが、防犯とその他の安全確保のバランスを取るために下記に記載されている項目を参考にしてください。
・家のドアは常に施錠をしてください。もし、安全錠を付けている場合は鍵を暗闇でも見つけやすい場所に置き、家族もしくは同居人などに鍵の場所を知らせておいてください。
・鍵を購入する際は、現金で支払いをしてください。クレジットカードを使用した場合、購入した鍵の形状と住所が他人に知られてしまう可能性があるため注意が必要です。
・鍵の強度は、その鍵を取り付けるドアおよびドア枠の質によって大きく左右されます。現在多く使用されているドアは、骨組みの両面に合板を2枚張り合わせただけの中空構造です。玄関のドアなどは、木製の場合、堅い芯があり、フレームでしっかり固定された最低45ミリはあるドアを使用するようにしてください。外側へ開くドアは、蝶番のネジが外部へ見えてしまうため、使用を避けてください。また、ドアとドア枠の間隔は3ミリ以内に納まるようにしてください。
・日本では、サムターン回しと呼ばれる犯罪手口が近年急激に増加しており、2004年度には、前年の200倍となる3万件の被害が確認されています。これは、玄関ドアの隙間、郵便受け、シリンダーの近くなどに小さな穴を開け、そこから針金を差し込み、サムターン(シリンダー錠の室内側に取り付けられた90度に回転して開閉する錠)を回し、内側から空ける手口です。この手口に対する簡単で有効な防犯対策は、サムターン部分を覆うことです。サムターンカバーは安価で、鍵専門店などで手に入ります。
・針金を鍵穴に差し、鍵穴内部の部品を動かして鍵を開ける、ピッキングという手口による犯罪も多発しており、家宅侵入事件のおよそ50パーセントがこの手口によるものです。主な防犯対策は、補助錠を扉の上部などに備え付けることです。2つ以上の鍵が備え付けられた扉は、開錠に時間がかかるため、ビッキング犯が諦める可能性が高くなります。また、主要な入り口は、全国防犯協会連合会によって、耐ピッキング性能と強度を審査された錠シリンダー、CP-C錠などを取り付けることをお勧めします。
・玄関ドアに付いている郵便受けから内側の鍵をあけ、侵入する手口があります。ドアの内側の郵便受けの部分に箱などを取り付けることにより、郵便受けからドア内側の操作ができなくなります。郵便受けの箱を取り付けた場合、たまった郵便物が盗まれることのないように、可能であれば箱の底に穴を開け、手紙や新聞が床に落ちるようにしておくことをお勧めします。
・ガラスパネルが付いているドアは無垢材に比べ、侵入される危険性が高くなります。見た目を良くするなどの目的でこのようなドアを使用したい場合は、パネルに強化ガラスやラミネートガラスを使用することで、侵入者がガラスを割って侵入することが困難となります。ガラスはパテで接着されたものでなく、内側から枠にはめ込まれたものを選ぶようにしてください。また、さらなる安全対策として、ドアに格子をつけることをお勧めします。
・ドアの呼び鈴を鳴らしている人を確認できるよう、ドアにのぞき穴を取り付けてください。また、夜間でも見えるよう、外灯を設置するようにしてください。
・ドアのチェーンの設置も、安全対策として有効な手段のひとつです。訪問者にドアを開ける際の防犯に役立ちます。
・ドアに蝶番ガードをつけたり、溶接ピンで留める丈夫なダブルローラータイプの蝶番を使用することで、バールなどの工具で蝶番を破壊しにくくなります。
・ドアの内側に金属板を取り付けるのも、ドアを補強する方法のひとつです。取り付けの際には、大工などの専門業者に相談してください。
・テラスのドアは容易に外すことができるため、侵入される可能性があります。もしこれらのドアを取り替えることができない場合は、ドアの取り外し防止装置を取り付けるようお勧めします。この装置は鍵専門店およびホームセンターなどで購入可能です。また、棒などを閉じたドアにかませておく方法もあります。
・一階部分の窓ガラスを割り、家に侵入するという手口もよく発生しています。補助鍵、防犯アラームなどの対策を取ることをお勧めします。また、破壊の困難な防犯ガラス、格子などの導入も有効です。防犯フィルムの設置も低価格で簡単な防犯対策ですが、フィルムの設置が外部から見えてしまうため、その効果には限りがあります。