高齢運転者
◇高齢運転者へのアドバイス
高齢者の運転経験は長いものの、年を重ねるにつれ、路上での判断や反応が鈍くなります。視力、聴力、スピード感覚の衰えは、高齢運転者にとって安全運転を妨げるものとなります。
日本では、高齢運転者に対する年齢制限は設けられていないものの、免許証の更新期間終了日の年齢が70歳以上の運転者は、更新期間の最終日より3カ月以内に自動車学校にて高齢者講習を受講すること、もしくは技能試験および簡易講習を受けることが法律で義務付けられています。
2005年の警察白書によると、昨年1年間の高齢運転者による交通事故発生件数は増加しているものの、高齢運転者の85パーセントが「運動能力は低下していない」、「車がないと不便」などを理由に免許を返納する意思がないとされています。
警視庁のまとめによると、2004年末までに65歳以上の運転免許保持者が過去最高の約927万1,700人に上り、これは運転免許保持者全体の11.8パーセントにあたります。高齢ドライバーが引き起こす死亡事故は、25歳から64歳のドライバーの約2.5倍と非常に高く、高齢化が進む中、この問題はさらに深刻になるといえます。
◇交通事故の危険を軽減するために
・運転の前に、フロントガラス、窓、サイドミラー等に汚れがなく、見やすい状態であるか確認してください。
・スピードの出しすぎに注意してください。ブレーキがかかってから車が停止するまでの距離は、スピードが上がるほど長くなります。
・停止距離は、ドライバーがブレーキを踏んでからブレーキがかかるまでの距離(空走距離)とブレーキが効き始めてから車が停車するまでの距離(制動距離)を合わせたものです。空走距離は、疲労や年齢などに影響されると言われています。
・2車線以上の道路では、左車線を走るようにし、右車線に移動する場合は、十分に余裕を持ってウインカーを出し、周りの車に確実に知らせてください。蛇行運転はしないようにしてください。
・車間距離を十分に取り、雨天や路面が凍結している際には車間距離をさらに取ってください。
・分岐点や交差点に近づいた場合は、見落としがちな歩行者、自転車、オートバイに注意を払い、安全を確認してください。
・ロータリーでは、スピードを落とし、突然車の前方を横切る歩行者に注意をしてください。
・長距離運転する場合には、交代で運転するようにしてください。
◇運転の際の健康状態
・普通車を運転するには両眼で0.7以上の視力が必要です。18メートル離れた位置から前方の車のナンバープレートが読めない場合は、眼鏡をかけるなどをしてください。
・白内障を患っている方は、日没後や日差しの強い時間の運転は避けてください。緑内障の方も、運転の際の注意点に関して、医師に相談してください。
・運転に影響を及ぼす症状(眠気、麻痺、けいれん)のある病気、もしくは痴呆症の方は、免許更新時に申し出る必要があります。
・知らない間に視力は低下します。定期的に視力検査を行なうことをお勧めします。
・運転の妨げになるような体の異常を感じた場合は、医師の診断を受けてください。
・医師により薬を処方された際、運転に影響する副作用があるか確認してください。
◇更なる安全運転のために
・技能や知識を再確認する講習を受講することをお勧めします。
・自分の運転能力を過信せず、身内などがあなたの運転に関し忠告をした場合には、耳を傾けるようにしてください
・高齢運転者は、運転の癖を直さない傾向にあるとの研究結果が出ています。高齢者を含むすべての運転者は、免許更新時などに公安委員会から配布される運転マニュアルを読み直し、正しい運転知識を持っておくことが大切です。
・60歳以上の運転者のうち約半数が、運転中にストレスを感じると訴えています。高齢運転者は時間に余裕をもって移動をし、見知らぬ土地を運転する際には事前に計画を立てておくようお勧めします。そうすることにより気持ちに余裕ができ、安全運転につながります。
・可能であれば、見知らぬ土地や長距離移動の際には同乗者に道案内を手助けしてもらうとよいでしょう。
・高齢になると車の乗り降りも困難となります。乗り降りの楽な車は、乗り心地もよく、安全運転につながります。
・パワーステアリングのついたオートマチック車をお勧めします。運転操作が単純なため、その分周囲への注意が行き届き、また車をスムーズに発進させられます。
・公共交通機関、タクシーや高齢者用送迎車などの情報を入手しておけば、自動車以外の交通手段が必要になった際に役立ちます。